日本語教育、日本語ボランティア、母語・母文化支援など外国人教育の問題、及び母語・第二言語・外国語の習得をテーマにした良書を紹介します。
日本語を教えることになった初心者のモデルケースで疑似体験できるようにしながら、外国人に日本語を教えるとはどういうことかを解説した本。教える側が自己中心的にならず、学ぶ側の視点を持つことの重要性を説いている。
初心者向けマニュアルとして書かれているが、後半の日本語教授法の内容はかなり高度。職業としての日本語教師を目指す人へのアドバイスもある。
在米日本人子女・帰国子女の現状の観察を通して、国際化する時代の中での外国語教育の問題点を分析した本。バイリンガル幻想を検証し、中途半端な形での外国語教育が外国語の習得にマイナスになり、母語喪失の危機にもつながる危険があることを説いている。
タイトルとは裏腹に、内容は適切な英語教育の必要性を説いたもの。
母語能力が低ければ外国語を学んでもたいした思考や表現はできないことから、外国語を身につけるためにはまず国語教育で外国語的に改造した日本語を用いて外国人の発想や討論方法を学ぶことが必要であると説く。著者の言う外国語とは現代世界の支配的言語である欧米語であり、日本語も結局欧米語を基準に評価されている。欧米語(欧米文化)の美点と欠点の両面を認識した上で取り入れれば役に立つ本である。
一人前の人間の条件として言語能力を重視し、明確な自己主張はもとより会話や討論における礼儀正しさまでを含んだ高度な言語技術を持てるように幼い頃から子供に徹底してことばを教え込むイギリスの国語(英語)教育の現状を報告した本。国語をしっかりと教えようというイギリス教育界の動向を紹介しながら、浅薄な外国語教育よりも、あらゆる学びの基礎としての母語能力を高めることの大切さを説いている。
日系ブラジル人の集住地である群馬県の太田市と大泉町における在日ブラジル人の教育・保育の現状と課題を調査研究した本。ホスト社会の日本人を含めて、児童・父兄・教師など関係する様々な人々のインタビューをもとに分析し、当事者の願望・希望・不安などを明らかにしている。結果的には極めて常識的に納得できる人々の思いが現われているが、在日外国人に対する対応や処遇の難しさも浮き彫りにしている。
前著『日本語に主語はいらない』ではスーパー助詞「は」が主題となっていたが、本書はスーパー動詞「ある」の分析を通して日本語文法を論じている。「ある」中心すなわち存在中心・自然中心・空間中心の日本語と、「する」中心すなわち行為中心・人間中心の英語を比較考察し、日本語における主語不在と「ある」の優位が人間をも自然の一部と見做す日本人の世界観そのものであることを解明している。
外国人を地域コミュニティのメンバーとして受け容れるというコンセプトによって、異文化理解・教材・音声学・文字・語彙・文法・読解・聴解・会話・コミュニケーション・総合的学習などのテーマ別に書かれた実践的論文集。
一般市民が外国人に日本語を教える場合を想定しているということだが、日本語教育理論を専門的に学んだ人でないと難しいレベル。
国分寺市立光公民館で開かれている「生活日本語教室」で教える5人の女性日本語教師による日本語論。敬語・女性語・身分関係を示す呼びかけ語・擬似血縁的な呼びかけ語・不快語・差別語などに対しては基本的に否定的、若者ことば・流行語・ラ抜き言葉など日本語の変化に対しては許容的な立場で、フェミニズム的な「日本人にも外国人にも心地よい日本語」を提唱している。
アメリカ、フィリピン、オーストラリアなどそれぞれの歴史を持つ世界各国の言語政策の歴史と現状を報告している。宗主国の言語の影響、多民族・多言語社会における公用語・国語形成の苦労、少数言語の現状、外国語とりわけ世界語としての英語との関係など、日本の言語問題、言語政策を考える上でも参考になる。日本語学習者がどのような言語的背景を持っているか、知っておきたい。
認知心理学や文化心理学から日本語教育にアプローチしたテキスト。知の構造と機能から説き起こし、第二言語習得の心理的メカニズム、母語・母文化の影響、留学生が体験する異文化接触の心理学、学習指導に関わる心理学などが論じられている。日本文化と日本語学習者の文化を重視した日本語教育研究になっているのが特徴。学習者と教師の両方の心理を踏まえた内容は日本語教育に携わる者にとって必読である。
グローバル化、ボーダーレス化によって物・人・マネー・情報・文化が国境を越え、市民レベルでの異文化交流や相互理解が求められる現代における日本語学習者の多様なニーズに応え、日韓中台の日本語教育関係者が従来の枠に囚われない総合的な日本語教育のあり方を様々なアプローチから論じた本。古典からインターネット、サブカルチャーまで、幅広い分野にわたる日本語教育の試行や模索が報告されている。
明治33年(1900)に発足した国語調査会から始まり、平成12年(2000)に国語審議会が廃止されるまでの百年間の日本語の歴史と国語政策の変遷を、国語学者・文学者・文化人などの活動やGHQの占領政策などを含めて詳細に跡付けている。現代日本語の表記法・文体の形成の歴史と、それらをめぐる思想上の論争などについても概説している。日本語教育関係者にも必読の一冊。
誤用、中間言語、学習ストラテジー、バイリンガリズム、異文化適応、母語喪失など、第二言語習得の諸相を、様々な学説的アプローチから解説した本。第二言語習得研究の入門書であるとともに、第二言語習得研究の知見を日本語教育に生かすための教科書にもなっている。
日本語教育関係者は読んでおきたい一冊。巻末に用語集が付いている。
日本語学習を、知識的な言語や文化の習得に終わらせず、学習者が主体的に日本語コミュニケーション活動能力を見に付けるための総合的な訓練の場と捉え、ステレオタイプでない異文化認識、日本語話者としての真の人間交流を目的とした日本語教育を提唱した本。
学習者の主体性から構築された言語文化活動理論は大変興味深い。
明治以来、国文法・学校文法は英文法をモデルに作られてきたため、日本語の事実と合わない文法になっている。特に構文論・形態論的に見て日本語には主語は存在しないのに、主語という概念を国文法に持ち込んだために、徒に混乱するだけの悲劇を生んだ、と主張する問題提起の書。
三上章の学説を踏まえつつ、情熱的に主語無用論と日本語に根ざした文法の必要性を説いている。
言語学・心理学・社会学などを総合しつつも、あくまで教育学の観点から書かれた外国語教育としての日本語教育学の理論書。
日本語教育が教材を学習する目的のための手段に堕すことなく、教室を関係が生起し人間が成長する社会的な場として捉え、日本語の学習が同時に自己実現の過程でもある「人間中心の日本語教育」を説く。
バイリンガル教育を、幼児期から12歳までのバイリンガル形成期の家庭教育と教育機関の面から探究した本。バイリンガルは母語の土台に花咲くものであることを前提に、アイデンティティが不安定になることなくバランスよく2言語を発達させたバイリンガルの価値や意義、逆に両言語とも中途半端になるセミリンガルに陥るリスク、バイリンガル教育の実例、適切なバイリンガル教育の方法などが論じられている。
敬語まで含めて見事に日本語を駆使する外国人力士の日本語習得の秘訣を、目標言語に浸り切るイマージョン教育に近い環境にあることを実際に外国人力士の日々の生活に取材したもので、読み物としても面白い一冊。
第二言語習得において最も必要な条件として、本人のモチベーションと目標言語を使わざるを得ない環境とその環境への順応性を挙げている。
カナダ人の和文英訳翻訳家が見事な日本語による絶妙の語り口で楽しく読ませる日本語論。
日本語の固有の特性に基づいて、「日本語の乱れ」を許容すべきと説く一方、日本語にとって保守的であるべき部分をバランスよく説いているところが特徴。言葉が好きな少年のような目で日本語を見ていて、日本語から読み解く日本文化論も面白い。
国民国家に支配された国民教育ではなく、また在日外国人の子供を母語・母文化によって囲い込むのでもなく、マジョリティの子供と外国人児童や帰国子女などのマイノリティの子供の相互作用を通じて新しい文化を構築し、子供に国家や民族への帰属を超えたポストナショナリズム時代の「ハイブリッドなディアスポラ」としてのアイデンティティを形成させる教育をすべきと提唱した本。
1970年代後半からインドシナ難民として日本に定住してきたベトナム系住民の生活世界を総体的に把握しようと試みた文化人類学的研究書。
在日ベトナム系住民のコミュニティ、仕事、宗教、世代間問題、本国との関係、難民としての国際的なネットワーク、日本社会との関係、アイデンティティなどの諸相が客観的に記述されている。ベトナム系住民の理解に欠かせない一冊。
日本統治下台湾の国語教育史を、日本人側からと台湾人側から、そして明と暗の両面から研究した本。特に台湾人の近代化志向に視座を置き、国語教育に対する台湾人の抵抗と受容の歴史を跡付け、国語教育を日本化ではなく近代化の過程として受容した台湾人の主体性に焦点を当てている。
従来のイデオロギー的植民地国語教育史と一線を画した実証的研究は読み応えがある。
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日本は単一言語社会ではなくすでに多言語社会であり、外国人の日本社会や日本語への適応という発想から、異なる文化を持った人々の共生という発想への転換が現実的に必要になっているという認識に基づき、社会の構成員としての在日外国人に対応した外国語による情報提供や相談活動、通訳・翻訳、日本語支援、母語支援などの自治体の言語サービスの現状と課題を考察している。