南丹日本語クラブ

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日本語教育おすすめ本 5

日本語教育、日本語ボランティア、母語・母文化支援など外国人教育の問題、及び母語・第二言語・外国語の習得をテーマにした良書を紹介します。

方言の文法

小林隆編・佐々木冠他著

「シリーズ方言学」第2巻。方言は中央語・共通語からの逸脱や劣位のものではなく、一つの言語であり、文法を備えているという観点から、方言の格、ヴォイス、アスペクト・テンス、モダリティ、文法化を論じ、共通語より方言の方が文法的に優れていることも少なくないことを示している。現代方言は動態が激しく、言語共同体の等質性を前提とした体系と捉えることは現実的に不可能という指摘もされている。

岩波書店、平成18年(2006)11月

「移動する子どもたち」と日本語教育

川上郁雄編著

出稼ぎ・留学・国際結婚・難民など人々が国家を超えて移動する現代社会において必然的に発生する「移動する子どもたち」に対して、第一言語・第二言語を問わず、彼らに「生きる力」「考える力」としての言語発達をいかに保障するかという教育の原点に立ち戻った年少者日本語教育の実践研究をまとめた論集。言語教育がなすべきことを忘れた多文化共生社会のイデオロギーの落とし穴にも警鐘を鳴らしている。

明石書店、平成18年(2006)10月

日本語は人間をどう見ているか

籾山洋介

認知言語学(認知意味論)の立場から、日本語における概念メタファー(ある種の物事を、別種の物事を通して理解する仕組み)と言われる比喩表現が、人間をどのように表現しているかを研究した本。植物・鳥・天気・機械・想像上の存在を使った概念メタファーを分析しながら、日本語における概念メタファーの特徴、日本語が表現している日本人の世界観を解明している。

研究社、平成18年(2006)9月

英語の感覚・日本語の感覚〜〈ことばの意味〉のしくみ

池上嘉彦

認知言語学的アプローチによる日英対照意味論。文法と意味の関係、語用論的な意味、意味変化などをテーマに、ネイティブにとっての意味とはいかなるものかを探究する。日本語と英語の発想の違い、ひいては文化の違いを踏まえ、俳句を例にとって翻訳の問題も考察している。日本の英語教育で書き換え可能な同義文とされているものも、形が違う以上それなりに意味も変わっているという指摘は面白い。

日本放送出版協会、平成18年(2006)8月

漢字伝来

大島正二

中国語の表意文字である漢字を、言語構造の全く異なる日本語に取り入れ、取り込んでいった過程を跡付けた本。漢字伝来、渡来人や知識人による初期の漢字使用、訓読の誕生、万葉仮名、片仮名・平仮名の誕生、漢字かな混じり文の成立に到るまで、日本人が漢字を日本語化した歴史がわかりやすく理解できる。漢字文化圏における漢字受容の比較史や、日本の漢字音と中国原音の対照研究にも説き及んでいる。

岩波新書、平成18年(2006)8月

日本語助詞の文法

半藤英明

日本語の助詞について包括的に研究した本。先行研究を批判的に吟味しながら整理し、助詞の本質を明らかにしている。終助詞をカ・ナに限定し、間投助詞とされていたものを表情詞として助詞から外すという提言をしている。ハ・ガ論をはじめ、問題になってきたことを見事に解き明かし、不明な部分が残るところは明示していて、とてもわかりやすい。助詞および助詞に関わる文法の研究をしてきた著者の集大成。

新典社、平成18年(2006)6月

かなづかい入門〜歴史的仮名遣vs現代仮名遣

白石良夫

本書刊行時点で使用者がほとんどいない歴史的仮名遣と完全に定着している現代仮名遣の対決を設定し、現代仮名遣に軍配を上げる。歴史的仮名遣は日本語表記の研究の成果の上に作られた近代国家としての規範仮名遣であるが、著者はその学問的合理性を認めながら、現代仮名遣を実用性の観点から擁護する。仮名遣が表音ではなく表記の規則であることは正しく指摘されている。著者は文部科学省主任教科書調査官。

平凡社新書、平成18年(2006)6月

多文化に生きる子どもたち

山田千明編著

日本・韓国・中国・台湾の幼児教育の研究者が、幼児期の異文化間教育のフィールドワークをもとに、異文化間教育と発達をクロスさせて考察した論集。グローバル化が掛け声ではなく現実のものになっている現状の下、研究者が持っている既存の価値判断枠組を排して、多文化共生の現実が生成する生活と教育の現場の実践から捉えている。良い意味で模索的な内容だが、日本語教育の観点からも参考になる一冊。

明石書店、平成18年(2006)6月

外国語で発想するための日本語レッスン

三森ゆりか

ドイツで教育を受け、母語教育の違いを体験した著者が、欧米の学校の母語教育で中心的な役割を担っている「テキストの分析と解釈」を国語に取り入れることを提唱した本。作家主義ではなく、書かれている事実を具体的な根拠にして読むテキスト主義に基づく読解学習は、論理的思考や討論の技術を養うのに役立つだけではなく、その訓練を受けている外国人に日本語を教える場合にも役に立つことがわかる。

白水社、平成18年(2006)6月

日本語の歴史

山口仲美

漢字との出会いから漢字かな交じり文の誕生、中近世の変遷を経て言文一致体による現代日本語の形成までを、話し言葉と書き言葉のせめぎあいという観点から辿った日本語史。専門的過ぎることには立ち入らず、古代・中世・近世・近代それぞれのポイントを押さえて日本語史の概略を理解できるように書かれた、新書ならではの一冊。グローバル時代のこれからの日本語への提言もしている。

岩波新書、平成18年(2006)5月

沖縄の方言札〜さまよえる沖縄の言葉をめぐる論考

井谷泰彦

戦前から本土復帰前まで、沖縄で国語習得のために方言禁止の罰則として使われた方言札の実態を研究した本。植民地主義的同化政策や軍国主義教育として語られてきた方言札は、土着的な村内法の罰札制度を県民が近代化志向の中で国語教育に適用した自然発生的なもので、そこには地政学的条件から形成された他律的アイデンティティがあったとする。イデオロギー的言説とは完全に一線を画した硬骨の研究書。

ボーダーインク、平成18年(2006)5月

日本語音声学入門 改訂版

斎藤純男

日本語音声学についての入門書。平成9年に出たものの改訂版。音声とは何か、単音、音節とモーラ、アクセント、イントネーション、リズム、ポーズ、速さ、強調、音素論などに分けて解説している。初学者が疑問を持ちやすい事柄にも目が行き届いており、音声学の入門テキストとしてはもっとも平易に書かれた一冊である。巻末に7言語対照音声学基本用語一覧が付いている。

三省堂、平成18年(2006)4月

アジア世界のことばと文化

砂岡和子・池田雅之編著

東北アジア・東南アジア・インド・漢字文化圏・アジアにおける英語など、アジア世界の言語・歴史・文化、その多様性や重層性、日本との関わりなどを紹介する、ことばを通しての地域研究の論文集。アジアの多様性を反映してごった煮的な内容だが、それぞれの国柄をまざまざと伝える興味深いレポートが収められている。日本人にとっての習得しやすさをまとめた、付論の「学びやすいアジアの言語」も面白い。

成文堂、平成18年(2006)3月

日本語教師・英語教師と学生のための日本語と英語の対照研究

板谷絢子

日本語を学ぶ外国人、ならびに英語を学ぶ日本人のための日英対照研究。文化的背景から生じる発想と表現の違いの認識に重点が置かれていて、統語論・意味論という単なる言語能力だけではなく、文化的・語用論的知識とコミュニケーション・ストラテジーを習得することの必要を説く。約100ページの小冊子で、教師が学習者の言語転移をいかに適切な方向に導くかというポイントが学べる入門書。

若草書房、平成18年(2006)3月

はじめての人のための日本語の教え方ハンドブック

田中寛

『みんなの日本語』初級の文型配列に沿いながら、50章に分けて日本語文型を解説した本。まえがきに文法に強い日本語教師を目指してほしいとあるように、日本語初級から中級にさしかかるレベルの基本文型の文法解説に重点が置かれていて、教師マニュアルというより日本語教育を学ぶ人向けのテキストと言える。日本語教育に関するコラムが26編も掲載されていて、日本語教師としての心得や教養が身に付く。

国際語学社、平成18年(2006)3月

非漢字圏留学生のための日本語学校の誕生

河路由佳

戦前・戦時下の日本語教育の実態を、1935年に設立された国際学友会の非漢字圏留学生のための日本語学校に焦点を当てて、その歴史と教材の検証、留学生を含めた関係者のインタビューによって研究した本。昭和17年から敗戦までの約3年間は戦時体制に組み込まれたが、その時代ですら留学生教育の本質部分は変わることがなかったという、日本語教育における戦前・戦後の連続性を明らかにしている。

港の人、平成18年(2006)3月

ニューカマーの子どもと学校文化

児島明

在日ブラジル人生徒を構造的弱者ではあるが状況を変えるべく戦略や戦術を展開する行為主体として捉え、日本人の教師や生徒も彼らと連帯する行為主体となり、自らの秩序の存続を目的とする冷ややかな抑圧体制と言うべき学校文化の変革の道筋を探求した本。マジョリティの日本側に強固なアイデンティティが存在するという錯覚が見られるが、外国人生徒の知へのアクセスを保障する体制作りの提言は賛成できる。

勁草書房、平成18年(2006)3月

メコン地域の経済

槙太一他(京都学園大学総合研究所叢書7)

日本との結びつきを深めつつあるメコン地域の観光・環境・教育についての研究書。第5章でベトナム・タイ・カンボジア・ミャンマー・ラオスにおける日本語教育の現状を紹介している。メコン地域ではバブル崩壊後日本が経済不況に陥って以降も日本語学習者が顕著に増加しているが、学習者の増加に見合う受け皿が必ずしも整備されていない現状があり、日本語普及に政府主導で取り組むべきと提言している。

大学出版センター、平成18年(2006)3月

日本人と中国人とのコミュニケーション

彭飛(ポンフェイ)

日本語と日本文化に通暁した中国上海出身の日本語学者による言葉をめぐるエッセイ集。遠回しで曖昧でファジーな日本語の表現を題材に、話者の明確な判断や断定を示すことを回避し、敬語や様々な表現によって人間関係に配慮する日本人の特性を論じている。日本語のどういう点が外国人に解り難いのかがよくわかる。標準語に対する大阪方言の魅力を語った部分や、日中の言語や文化の比較考察も興味深い。

和泉書院、平成18年(2006)3月

新訂版 江戸の翻訳空間〜蘭語・唐語語彙の表出機構

岡田袈裟男

白話小説や蘭学を通じて流入した中国語やオランダ語が、日本語の語彙・表記・文法などにいかなる表現として現れているかを、江戸時代の日本人の表出意識から読み解こうとする日本語史。視覚的なイメージやレトリック効果やペダントリーというファッション性として蘭語・唐語語彙が表出されていることを、日常語とは乖離した外来語の漢語を接合して成立した日本語の性格に基づくものと捉えている。

笠間書院、平成18年(2006)3月

方言が明かす日本語の歴史

小林隆

京都・江戸など中央語の文献のみによる日本語史ではなく、方言からのアプローチを取り入れた日本語史を描こうとする本。各地の方言の歴史を明らかにし、中央語の歴史と合体させることで、文献だけでは解明できなかった日本語の歴史の再構成を試みている。各地に生きている「こそ」係り結びの考察や、東北方言の格助詞「さ」が原形は中央語「さま」であったという考証など、興味深い話題満載の一冊。

岩波書店、平成18年(2006)2月

日韓文化交流

藤井茂利

古代朝鮮語との比較や影響関係から古代日本語を研究している国語学者の著者が、日本語学・日本文学などを学ぶ韓国の学生を対象に長年行なってきた日本語教育の軌跡を綴ったコラム集。万葉集など古文をテキストにしており、大学生向けだけに内容はかなり高度。日韓の学生・研究者・市民の交流の現場が伝わってくるが、政治的ではない客観的な学問に裏打ちされた真の異文化交流の形を示した一冊。

西日本新聞社、平成18年(2006)2月

漢文の素養〜誰が日本文化をつくったのか?

加藤徹

日本人と漢文との関わりを、卑弥呼から終戦の詔勅までの有史以来の歴史から探り、漢文の歴史的・現代的意義を世に問う本。漢文の素養なくしては日本人の知的精神的世界も成り立たなかったことを説き、江戸・明治の蓄積を使い果たした漢文衰退の現代に、東洋人のための教養、生産財(文体力と造語力)としての教養、中流実務階級(責任ある市民)の教養を涵養するための漢文の復権を提唱する。

光文社新書、平成18年(2006)2月

日本の漢字

笹原宏之

日本語における漢字の歴史と現在を辿った本。漢字の受容から、俗字、国字、当用漢字、JIS漢字、地名、人名、幽霊文字、個人漢字など様々な切り口から日本の漢字使用の実態を紹介し、漢字の持つ柔軟な対応性と日本人の選択と創意工夫によって今なお創造され続けている日本漢字ワールドの面白さを示す。統制を嫌い、漢字の多様性と生産性を肯定的に捉える日本文化らしい漢字論。

岩波新書、平成18年(2006)1月

関西方言の広がりとコミュニケーションの行方

陣内正敬・友定賢治編

言語学の研究者22人が、現代日本におけるコミュニケーションにおいて方言の果たしている役割を、関西方言の動向を通して考察した本。全国各地における関西方言の受容実態をフィールドワークし、関西方言がどのように評価され、どのようなツールとして受容されているかを明らかにしている。人間関係を楽しく築こうとするポストモダン社会におけるコミュニケーションの要請に応えるものであるとしている。

和泉書院、平成17年(2005)12月

社会言語学のしくみ

中井精一

「日本語のしくみを探る」第7巻。社会言語学は社会と言語の相関関係に焦点を当てた学際的研究である。本書は教科書的な概説書ではなく、社会言語学が扱う範囲、日本の社会言語学の歴史、基本的な理論とフィールドワークの方法、外国語の接触の局面、ピジンやクレオールなど、いくつかのテーマを取り上げて解説するというスタイルをとっている。世界における日本語、日本語教育の歴史も取り上げている。

研究社、平成17年(2005)12月

木簡による日本語書記史

犬飼隆

木簡を主要な資料として、八世紀以前の揺籃期の日本語書記史を実証的に解明する日本語史の本。日用・実用の書記としての木簡の分析から、地方生活者を含む普通の人々が漢字を馴化し、日本語を表現する書記媒体へと使いこなしていく過程を解読する。また古事記の書記は、木簡の日本語と共通するが、それを文章語として精錬したものであることを明らかにしている。

笠間書院、平成17年(2005)12月

チベット語になった『坊っちゃん』

中村吉広

チベット語とチベット仏教を学ぶためにチャプチャという田舎町に留学した日本語教師が、チベット語と日本語の文法の共通性に着目し、日本語学習や日本語文献の翻訳を通じて、失われ行くチベット語の復興に取り組んだ記録。
日本語教師の立場から、中国の「解放」によって民族浄化的な支配と弾圧を受けながら、民族の文化や言語、そして誇りを失いつつあるチベット人の現状を伝えている。

山と渓谷社、平成17年(2005)12月

日本語の森を歩いて

フランス・ドルヌ、小林康夫

固定的なラング(言語)からではなく、ランガージュ(言語能力)において発話主体が経験や関係を操作する言語現象の観察から日本語文法を考察した本。
個別言語は異なっていても主体の関係操作そのものは一般化可能と見る立場だが、日仏語を助詞やモダリティなどの観点から対照して、それぞれの言語の特性を解明しつつ、言語が文化に深く根ざしている様を明らかにしている。

講談社現代新書、平成17年(2005)8月

人名用漢字の戦後史

円満字二郎

敗戦後の「ことばの民主化」としての漢字制限の歴史を、人名用漢字に焦点を当てて辿った本。漢字を封建的なるものとして追放しようとする進歩主義的な国語改革派が占領下の政治状況に乗じる形で主導した戦後の国語政策が、名付けの権利の侵害という矛盾を抱え込みながら迷走し、国民の自由意識の拡大やコンピューターによる漢字表記の技術革新の前に影響力を失っていく歴史を描く。

岩波新書、平成17年(2005)7月

旧字力、旧仮名力

青木逸平

旧字・旧仮名の基本知識と覚え方を伝授する練習問題集。現代かなづかい、常用漢字や人名用漢字など新漢字に見られる不合理やごまかしを批判し、旧字・旧仮名の合理性を説く。字音仮名遣い(漢字音の仮名遣い)は難物だが、それを除けば旧字・旧仮名の基本が三日程度あれば遣いこなせるマニュアルになっている。旧字・旧仮名で書かれている近代文学の名作の原典の抜粋を掲載し、鑑賞に供している。

日本放送出版協会、平成17年(2005)6月

日本の敬語論〜ポライトネス理論からの再検討

滝浦真人

ポライトネス理論による敬語論。山田孝雄・金田一京助などの主体の敬意を見る国学的敬語論と時枝誠記・三上章などの関係認識の敬語論を対置し、前者をナショナリズムのイデオロギーとして批判した上で、関係認識の敬語論をポライトネス理論をベースにした対人距離の方略としての語用論の敬語論へとつなぐ試み。敬語の本質は遠ざけにあり、国学的な主体と対象のコミュニオンの敬語論は成り立たないとする。

大修館書店、平成17年(2005)6月

漢語からみえる世界と世間

中川正之

日本の漢語と現代の中国語との違いやズレを、日本人と中国人の世界認識の違いと語の分類基準の違いから意味論的・認知言語学的・語用論的に解釈した本。漢語と中国語を比較すると、客観的・分析的な中国人に対して、日本人はイメージを共有できる世間という枠の中で感覚的・感情的に細やかな表現を行なっており、世間の外側の世界に抽象的・論理的な言葉の領域があるという構造になっていることがわかる。

岩波書店、平成17年(2005)5月

ことばと文化の日韓比較

齊藤明美

韓国で長く日本語を教えている著者が、日韓のことばと文化について社会言語学的に比較したコラム集。似ているようでいて異なる日本人と韓国人の価値観や人間関係のあり方をそれぞれの言語を通じて体験的・実感的に説明している。
日韓の違いを的確に理解できるとともに、生活全般にわたる現代韓国事情や韓国人の民族的個性と魅力を伝えていて、日韓の相互理解に必読の一冊。

世界思想社、平成17年(2005)5月

日韓対照言語学入門

油谷幸利

日本語と韓国語の発音・品詞・文法・語彙・待遇法などについて比較した対照言語学のテキスト。逐語的に直訳できるほど似ている両言語の、ズレの部分に焦点を当てており、誤用分析の本とも言える内容になっている。韓国語の基本知識を持っていることが必要で、初級を終えた程度の韓国語学習者が(あるいは韓国人の日本語学習者が)、日韓両言語のズレの部分から生じる誤用を克服するテキストとして使える。

白帝社、平成17年(2005)5月

英語の発想がよくわかる表現50

行方昭夫

日本語と英語は異なる言語であることを前提としつつ、日本語と英語に橋を架けてくれる本。英文と和訳をセットにして50題暗記してしまうことで初級レベルの基礎を固め、中級にステップできるように工夫してある。英語学習における文法の重要性を説き、中高生向けとしてはかなり高度なレベルの外国語学習論・翻訳論が散りばめられていて、大学生や社会人の英語学習書としても読み応えがある。

岩波ジュニア新書、平成17年(2005)4月

英語の敬語〜絶対覚えておきたい基本フレーズ

数佐尚美

商談や会議などのビジネスの現場で必要となる英語の敬語表現を学べる社会人向けテキスト。英語には日本語のような敬語はないと言われるが、実は敬意を表し、他人の気持ちを配慮する表現は決して少なくない。挨拶・感謝・謝罪・確認・依頼・許可・提案・主張・断り・賛成・反対に分けて、英語の敬語の基本フレーズを解説している。例文がシンプルでわかりやすく、活き活きとしていて、実践的に役立つ一冊。

中経出版、平成17年(2005)4月

初級日本語文法と教え方のポイント

市川保子

初級日本語を教えるのに必要な文法項目を網羅し、基本的な文法と教え方を解説した日本語教師用マニュアル。各項目ごとに学習者にとってどこが難しいか、どんな誤用をするかを示し、どのように教えれば学習者が習得していけるかという指導法と指導ポイントを伝授する。教える側ではなく、あくまで学習者の視点に立った内容が非常に参考になる。巻末に主要初級教科書との対応表が付いている。

スリーエーネットワーク、平成17年(2005)4月

図説アジア文字入門

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

広範な地域にまたがるアジアの文字をビジュアル的に紹介した本。複雑に入り組んだ多民族・多宗教のアジアの文字をインド系文字・アラビア文字・アラビア系文字・漢字・漢字系文字・イ文字・ハングル・トンパ文字・ラテン文字・キリル文字に整理して、それぞれの文字と使用者たちの歴史、文字としての構成原理、様々な書体、活字と印刷、現在の使用状況などを多数の写真を使って解説している。

河出書房新社、平成17年(2005)4月

古代日本 文字の来た道〜古代中国・朝鮮から列島へ

平川南編

平成14年開催の国立歴史民俗博物館のフォーラム「古代日本 文字のある風景〜金印から正倉院文書まで」の書籍化。漢字学・国語学・古代朝鮮史・日本古代史・文化人類学の研究者6人による基調講演・コラム・フォーラムから成り、日本における文字の創成期の歴史を辿る。石碑や木簡などの文字資料から、朝鮮半島における漢字使用が日本にどのように影響したのかというテーマに迫っている。

大修館書店、平成17年(2005)3月

日本語を知らない俳人たち

池田俊二

近代以降の俳句に見られる日本語の誤用、たとえば終止形と連体形の混同、助動詞「き」の連体形「し」の誤用、歴史的仮名遣の間違い、文語と現代語の混用などを批判したエッセイ集。著者は元業界誌編集者の俳人で、文学史上の俳人や大新聞の俳壇の選者を斬っている。短歌・俳句など伝統的な詩形式は言うまでもなく、文学と文法規範との関係について改めて考えさせられる。後半は国語問題のエッセイを収める。

PHP研究所、平成17年(2005)3月

漢文脈の近代〜清末=明治の文学圏

斎藤希史

漢文文化圏ならざる漢文文学圏における近代への思想と表現を、清末と明治の梁啓超と森田思軒という二人の文業を中心に考察する。文章をその出自ごとに分解して国籍のラベルを貼らずに、近世の日中における公式的な書記形態であった漢文脈のエクリチュールの近代的変容を、メディア・ナショナリズム・近代・文学・翻訳・日中関係・オリエンタリズムなど様々な論点から探究している。

名古屋大学出版会、平成17年(2005)2月

在日コリアンの言語相

真田信治他編

在日コリアンの言語相を、1世と2・3世との比較、在米・在中コリアンとの比較、朝鮮学校など民族教育の歴史と現状など多方面から研究した論文集。在日コリアンの言語生活は母語である日本語にモノリンガル化しているが、韓国ブームやニューカマーによる刺激などによって新時代を迎えつつある一面も明らかにしている。言語面から見た在日コリアン研究として貴重な一冊。

和泉書院、平成17年(2005)1月

國語問題論爭史

土屋道雄

戦後の国語改革に見られるような表音主義を理念とする進歩的国語観に対して、伝統と合理性を兼ね備えた漢字仮名交り文・正漢字・歴史的仮名遣を国語の正統とする保守的立場から、近代日本の国語をめぐる論争の歴史を跡付けた本。国家による国語の人工的な統制を批判している。
歴史に残る文人や評論家がいかなる国語観を持っていたかを知るのも興味深い。

玉川大学出版部、平成17年(2005)1月

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